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学会概要

代表理事挨拶

 このたび、本学会の代表理事を拝命しました松下佳代です。これで図らずも、3期9年間、代表理事を務めることになります。本学会の会則では、「代表理事は70歳を定年」とするとのみ書かれ、再任についての規定がありませんが、これまで3期務められたのは、学会創成期の故柴田義松先生のみでした。私も再任までという気持ちでおりましたが、新理事会での議論の結果、3期目を務めさせていただくことになりました。

 6年前に初めて代表理事に選んでいただいた際、私は挨拶の中で「本学会の活動を今まで以上に、知的にスリリングで豊かなものにすべく努力したい」と記しました。 また、3年前の2020年という年は、コロナ禍による学校・大学の休校措置がとられる中で、私たちカリキュラムを研究し実践する者の役割が大きく問われた年でした。そのときの挨拶では、上記の目標を引き続き掲げるとともに、新たなチャレンジとして3つのことを挙げました。「カリキュラム研究を土台とした柔軟なカリキュラム運用の提案・発信」「若手育成・支援、とくに研究奨励賞の選考の見直し」「学会活動におけるICTの活用の推進」です。
 2番目、3番目のチャレンジについては、担当理事・事務局の献身的な活動、会員のみなさまのご協力により、大きく前進したと考えております。 学会賞委員会が新たに設置され、その下で、研究奨励賞と優秀発表賞という2つの賞が整備されました。研究奨励賞についてはしばらく受賞者なしが続いていたのですが、この間2年続けて受賞者が生まれ、優秀発表賞についても昨年度初めて選考されました。また、広報・若手育成委員会の下で、若手育成セミナーが連続開催され、大学の壁を越えたネットワークが創られつつあります。 また、事務局業務の外注先を国際文献社からガリレオに移行したことで、スムーズな「オンライン投票」が実現されました。さらに、『カリキュラム研究』第33号(2024年3月刊行予定)からは「オンライン投稿」もできるようにすべく、準備を進めてくださっていた前期の紀要編集委員会から今期の委員会へ引き継ぎが行われています。

 一方、「本学会の活動を知的にスリリングで豊かなものにする」という目標に直接つながる1番目のチャレンジについては、まだ道半ばという印象です。3年前にはコロナ禍であったこともあり、「柔軟なカリキュラム運用」を挙げましたが、大きくは、カリキュラムの研究と実践と政策をどうつなぐか、という本学会の中核に関わるチャレンジです。このチャレンジは、2番目、3番目と違って、到達点が見えにくく、ずっと追求していくべき課題ともいえます。
 過去3年間に、大会課題研究では、カリキュラムの編成原理、教育内容論、資質・能力論、カリキュラム・マネジメント、教師教育、大学院教育、SDGs、ダイバーシティ、インクルーシブ教育、道徳教育、市民性教育、平和教育といったテーマを取り上げてきました。また、広報・若手育成委員会主催の「秋のセミナー」では、評価活動、カリキュラム・オーバーロード、教員免許更新制、研究委員会主催の春の「研究集会」では、GIGAスクール構想、協働的な学習、性の多様性といった、テーマが議論の俎上に載せられてきました。どれも重要なテーマですが、実践や政策につながりつつも、カリキュラム研究ならではのアプローチをいかに行っていくか、さらに掘り下げていく必要があります。その際、なるべく固定メンバーにならないようにし、若手・中堅の会員や(必要なら)学会外の専門家にも登壇していただいて、新しい風を取り入れながら、「知的にスリリングで豊かな活動」を展開していければと思います。22年度の大会では国際交流委員会のご尽力で英語による課題研究が開催されましたが、こうした海外との交流も「知的にスリリングで豊かな活動」には不可欠です。

 一方、この3年間、会員数が微減傾向にあるのは少し気になるところです。2020年度は714名だったのが、2022年度は699名と700名を割り込んでしまいました。会員数減少は他の学会にも見られる傾向です。大学教員・大学院生だけでなく、初等・中等教育の教員、教育行政や政策立案の担当者、その他カリキュラム研究・実践・政策に関心をもつ方々に、会員の裾野を広げることが求められます。と同時に、それがカリキュラム研究の質を下げることなく多様性を生み出すよう、両立をはかっていくことが必要になります。

 ここに述べてきた諸課題への取り組みは理事会だけでなく、会員のみなさまのご理解と活動によって初めて実現します。これまで以上に積極的なご参加をお願い申し上げます。

2023年8月20日
日本カリキュラム学会代表理事 松下 佳代

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